2011.4.潮来

なんという優雅さよ。これが聖人の乗り物か。釣れる場所ならどこにでも現れる。
それは何時だか分からない。ある晴れた春の日、北利根川の湖岸に上品なワインレッドの車が止まっていた。やがて、車のドアが開くと中から聖なる男が降りてきた。聖人は手にワインレッドの竿とリールを持っている。竿の先にはキラキラと光る羽のようなものがぶら下がっていた。

聖人が岸辺に立ち、手を動かした。赤い竿が美しい弧を描くと、羽のような何かが打ち出される。それは朝日にきらめきながら放物線を描いて飛び、やがて水の中へ消えていった。

「フィッシュ」
聖人がそう口にした。
うおおお。コイツは世界記録かもしれんゾォ!
すると竿が満月のようにしなっていく。ギリギリギリと音がしそうに見えるのだが、聖人は落ち着き払っていて、まるで折れる気色がない。
誰もいない湖岸線、バサーと呼ばれる釣り人がいれば、おそらく聖人の竿捌きに目を奪われたことだろう。「なんて優美なんだ…」

しばらくすると聖人の手には大きな魚が握られていた。あまりに大きな魚だ。こんな魚が地上にいるのか。

魚を放した聖人が車に乗り込み、エンジンをスタートさせる。ひたすらエレガントに赤い車が去って行った。

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